新しいシステムを開発する前には、現行システムの構成と機能、システム間のデータ連携、使用中の技術要素、ソフトウェアとハードウェア、そしてネットワーク構成を正確に把握することが重要です。現行システムのパーツを段階的に分析することで、開発の方向性を明確にできます。この記事では、現行システムパックの手順とその目的について詳しく解説していきます。
システム構成と機能の把握
現行システムの最初のステップは、どのようなシステムが構成されているかを把握することです。企業の業務を支える基幹業務システムと、それを補助する支援業務システムに分類されます。各業務に属する単位業務システムの名称とその主な機能を明示し、全体像を把握します。例えば、与信管理業務では「与信企画管理システム」と「与信相談管理システム」に分かれ、それぞれ与信料率の策定や運用指針の作成、取引先情報の管理や融資意向書の発行といった役割を担っています。加えて、顧客登録処理システムでは顧客の基本情報を一括管理し、登録や変更、照会、削除などの処理が可能です。
次に、現行システムが提供している機能の詳細を階層的に整理し、主要機能、下位機能、さらに細分化された詳細機能の3レベルで可視化します。これにより、どこにどのような役割があるのかを直感的に理解できます。
最後に、業務システム間のデータ連携、つまりインターフェースの構成についても確認が必要です。どんな種類のデータがどの形式で送受信されるのか、通信プロトコルや連携方式、更新頻度なども重要な要素です。これらの情報を網羅的に把握することで、システム間の整合性を確保できます。
アーキテクチャとソフトウェア構成の整理
次のステップでは、システムのアーキテクチャ構成を整理します。これは業務遂行に使用される技術要素を、上位から下位にかけて階層的に示した図をもとに把握します。複数の業務システムに異なるアーキテクチャが使用されている場合、基幹業務システムを中心に分析を行うのが一般的です。続いて、ソフトウェア構成の整理に入ります。業務システムごとに導入されているソフトウェアの製品名、用途、ライセンス方式、保有ライセンス数などをリスト化する必要があります。特に、ライセンスの種類と保有状況を正確に把握することは、開発費の見積もりやライセンス費用の管理において非常に重要です。
このようにして、業務プロセスと密接に連携しているソフトウェア環境を全体的に把握し、次に進む準備を整えます。
ハードウェアとネットワークの現状確認
システムパックの最終ステップでは、ハードウェアとネットワーク構成について分析します。ハードウェアについては、業務システムが稼働しているサーバのスペックや台数、そして冗長化の有無などを確認します。サーバの冗長化は、業務の連続稼働を保証するために非常に重要であり、特に基幹業務においては障害対策として不可欠です。冗長化が現行システムで採用されている場合、新システムにも同等の対策が必要となるため、コストや開発の複雑度が上昇する可能性があります。
ネットワーク構成については、サーバの物理的な配置や接続方式を図式化し、システム同士の接続状態を明確にします。これにより、セキュリティリスクやネットワーク障害時の復旧対応も円滑に行えるようになります。
実際に障害が発生した場合にも、ネットワーク構成図は問題の特定と復旧を迅速に進めるための有効な資料となります。
まとめと次のステップ
現行システムパックの手順は、システム開発における出発点として極めて重要なプロセスです。構成や機能、アーキテクチャからソフトウェア、ハードウェア、ネットワークに至るまで全方位的に把握することで、開発の方向性が明確になります。次のステップとしては、これらの情報を基に新システムの要件定義やアーキテクチャ設計に進むことが求められます。正確な現状分析が、品質の高いシステム開発の礎となります。