Cプラスプラスでは、データをまとめて管理する代表的な方法として構造体とクラスが存在します。
この二つは一見似ていますが、アクセス指定や使い方、パフォーマンスに微妙な違いがあります。本記事では、構造体とクラスの違いを明確にし、それぞれを使い分けるための指針を提供します。
アクセス指定による構造体とクラスの基本的な違い
C++において構造体とクラスの最も明確な違いは、デフォルトのアクセス指定にあります。
構造体はデフォルトで全てのメンバーがpublic
であり、外部から自由にアクセス可能です。一方、クラスはprivate
がデフォルトで、メンバーは外部からアクセスできない設計になります。
たとえば、以下のようなコードでは構造体とクラスの振る舞いが異なります。
struct UserData { int ID; std::string name; };
は、IDもnameも外部からアクセス可能ですが、
class DataManager { UserData user; std::vector<int> buy_list; };
は、すべてのメンバーがprivate扱いになります。
ただし、推奨されるコーディングスタイルとしては、アクセス修飾子は明示的に記述することです。これはクラス・構造体を問わず、意図を明確にするために有効です。
構造体でも private:
を明示して内部状態を隠すことが推奨される場合がありますが、これは開発方針や用途により異なります。
構造体とクラスの機能的な共通点と差異
C++では、構造体とクラスは技術的にほとんど同じように設計されています。
どちらもメンバー関数を持つことができ、継承やポリモーフィズム、コンストラクタやデストラクタも利用可能です。
つまり、構造体を使ってオブジェクト指向の設計を行うことも可能です。
実際にアセンブリコードを比較すると、構造体とクラスの間には違いが存在しません。メモリ上の配置、関数呼び出しの方式、コード生成結果は一致します。
このことからも分かるように、C++の構造体はC言語における単純なデータコンテナとは異なり、高度な機能を備えたオブジェクトです。
また、構造体にもメンバー関数を定義することができ、用途に応じて柔軟に設計が可能です。C言語では関数ポインタによって似た設計が可能ですが、C++ではより自然で安全な形で実現できます。
コーディングスタイルと構造体の最適な使用場面
実用面においては、構造体とクラスの使い分けはコーディングスタイルと意図によって決まることが多いです。
特に、データのみを格納し、振る舞いを持たない単純なコンテナを作成する場合、構造体の使用が適しています。
このような構造体はメモリコピーも高速で、代入時にもmemcpy
のような挙動を示すため、オーバーヘッドが最小限に抑えられます。
たとえば、struct Asset { int id; double price; };
のような構造体は、パフォーマンスを意識した設計において有効です。
一方で、メンバー関数を持ち、内部状態を隠蔽し、データと処理を一体化するような場合は、クラスを使うべきです。
結論としては、「純粋なデータの集合体か否か」が構造体とクラスを選ぶ基準になります。データ構造が複雑化する場合は、クラスによる設計が望ましいです。
構造体とクラスは、C++におけるデータ設計の根幹を担う存在であり、技術的な違いはほとんどありません。
主な違いはアクセス修飾子の初期値にあり、設計意図やスタイルガイドに基づいて選択することが重要です。
構造体はシンプルなデータ保持、クラスは機能とカプセル化が求められる場面でそれぞれ有効です。
今後は、コードの可読性と保守性を考慮しながら、構造体とクラスを適切に使い分けることで、より洗練されたソフトウェア設計が可能となるでしょう。